NOVEMBER

肌寒さに
自分の体の温もりを
感じる時
君は
針葉樹の森に
一瞬かいま見える
冷たい湖に激しく
心を奪われる
見上げる
空の冷たい青のように
自分を感じて
冷たい青空に
落ちていきたいと思う
吸い込まれたいと
思う
空の冷たい青のように
自分を感じて
幸福を感じる
空の冷たい青に
なりたいと思う
十一月
NOVEMBER
は君の好きな月だ
冷たい月
ちっぽけな温もりから
可能な限り
遠ざかっていたいと
考える
この冷たさをあらゆる
ものに及ぼしていきたい
と考える
海の冷たい青のように
自分を感じて
その青に沈んでいく
太陽の冷たい赤のように
自分を感じて
もうじき
色づき始める木々
の葉の
冷たい赤のように
自分を感じて
それらの冷たい赤
冷たいそれらの赤
になれば
いいと考える
そして
風が吹いて
冷たく乾いて
いけばいい
と考える
赤く乾いた枯れ葉
dead leaveのように
風に吹かれて
舞う
自分を
chicだと考える
パリパリと気持ちよく
誰かの足に踏まれて
君の上に雨が降って
霜が降って
雪が降って
simpleに
土に帰っていけば
いいと考える
君は
冷たい湖に
沈んでいく
冷たい湖に
なればいいと考える
.

暗い情念

**

乃木坂は私の好きなグル-プ
私の愛してる唯一の
アイドルグル-プ
乃木坂が歌えない歌
私が代わりに
歌ってあげる、


この時期になると
街に溢れる
ローウィン
クリスマスだとか
言ってるゴミどもを
始末して
私は誰にも愛されてない
虐待されてる
人間扱いされてない
私は誰も愛してない
ああ私がこの世界で一番
一番愛を求めてるんだ
でも誤解しないで
愛されたがってるのは
私じゃない
愛されたがってるのは
世界そのもの
世界が愛を求めてるんだ!

ゴミを始末した後の
世界に映る綺麗な空
悲しい空
孤独な青空…
私はその時
生まれて初めて
涙を流す

**


少女よ
春の嵐
おまえのスカ-トが舞い
傷だらけの花の
太腿が見える

少女よ
おまえの暗い瞳に
静かに吹き荒れる
夏の嵐に
俺は戦慄する

少女よ
おまえに殺された
枯葉が舞っている
おまえの秋の嵐に
山は血の色に染まって

そして
少女よ
おまえは暗い光に
導かれ
冬の嵐となって
包囲された世界を
救出しようと
試みる

**


夢から覚めて
悪夢を生きる
それが
僕たちの
運命
僕たちは
心の
奥底で
その運命を愛してる
悪夢
僕たちの
愛の対象
ずっと
昔から
君を愛していた
ナイトメア
君も
僕を
愛してくれる?
僕たちは
幸せになれるよね?
ナイトメア?

夢から覚めて
悪夢を見ようとする

君は

夢しか見たことのない
君には

現実は見えない

現実を見るくらいなら
悪夢を選ぶ

だって悪夢なら
夢の中で十分
親しんでいるから

僕たちは悪夢には
十分精通している

僕たちは夢の中で
悪夢を待っていた

うろたえることは
何もない

まるで
それが天職である
かのように
悪夢の役割を
実行に移せるさ

君の夢
僕たちが見ていた夢
それは悪夢の
プレリュード
エチュード
に過ぎなかった

そして
でも
現実はそこにある
誰の目にも留まらずに

僕たちの夢が
悪夢の中で絶頂を
むかえて

死に絶えた後

現実
君は待っている
初めて
注がれる
視線を

たとえ
それが僕たちの視線では
ないとしても

僕たちの夢
夢の中で
悪夢へ高まっていく
僕たちの夢
その夢を
愛することしか
僕たちは知らない
できないとしても
.

夢から覚めて
悪夢を生きる
それが
僕たちの
運命
僕たちは
心の
奥底で
その運命を愛してる
悪夢
僕たちの
愛の対象
ずっと
昔から
君を愛していた
ナイトメア
君も
僕を
愛してくれる?
僕たちは
幸せになれるよね?
ナイトメア?

一緒に
地獄に落ちていく
たくさんの
涙と血を
血と涙を
流して
命を
命を
捧げて

**

**

空の下を私は歩く
もうそんなことはないと思っていた
そんなことはずっとないと
なのに
なんだろう この感覚
うまく言えない
ここにいるということ
なんだろう うまく言えない
私はここにいなかったから
何処にも
今 ここに いる
青い空の下を歩いている
隣には そうあなたがいる
あなたが私の手を握る
ああ 私はもうここにいる
もうどこにも帰れない
ここにしか
あなたの側にしか
私のことをじっと見つめる
あなたにどうすればいいのだろう
わたしは
わたしは…


**


夜、稲妻が閃くと
驚くほど明るい
青空が見えることがある
そんなふうに
私の恋は
終わって始まった

あなたは
いつ私の前に
現れたのだろう
空は明るいのに
急に滝のように
降ってきた雨に
傘も持たない私が
雨宿りする場所もなく
名前も知らない
白い花の前で
立ちつくしていた時
あなたもそこにいた
のではなかったか
私の耳で聴こえない
雷鳴が鳴っていた
あの夏の午後

昨日の記憶はない
何も覚えてはいない
でもどこか
懐かしく
記憶のない現在に
あなたはいる
あなたはどこから
来たのか
何故
私の前にいるのか
答えはない
答えは
一瞬の青空と共に
あの時消えてしまった
のかもしれない
聴こえない雷鳴のように
私の耳でずっと鳴って
いるのかもしれない
そして
あなたはいる
私の前に
過去もなく
現在もなく
未来もなく
私の前に
あなたの微笑みだけが
あの時
辛抱強く
雨に打たれていた
fragileで
それでいて
どこかたくましい
あの白い花のように
在る

ここから
どこへ行けばいいのか
どうすればいいのか
あなたは何も語らない
ただどこか遠くを見て
微笑むだけ
私はわからない
私には何もわからない
ただ
あなたがするように
どこか遠くを見てみる
それはあの日
稲妻と同時に閃いて
消えた天上の空の
ことなのかもしれない

そう
私の過去も現在も未来も
全ては
終わって始まった
あの日
あの白昼の
光る稲妻に一瞬見えない
夜のかいま見えた
あの時

そして今
私はあなたを深く
愛していることを
知る

**


しずかに流れる
音のない水に
花のように
ただよう顔を

誰もが見ていた
見ていなかった
忘れられていた

美しい水の
底へ
オフェリア
おまえは
長い眠りから
さめて
溺れるように
息をすい息をはき
愛しい人をさがし
始める

**


冷たい風が
長い髪を乱し
顔に容赦なく
吹きつけるのを
嫌っていた
公園の木々が
空に広げる
裸の貧しい枝
底冷えがして
白い雪が
ちらちら落ちてきて
空は灰色の雲で
覆われていた日々
あんなに春になるのを
待ちわびていたのに
ある時
光の中に
冬の終わりを予感する
この喪失感はなに?
あなたはそんなふうに
私から去って行ったのを
思い出す
去年の今頃も
そしてずっと前から
あなたはこうして
私から去って行った
残された私の気持ちなど
まるで関心ないように
君は僕のことを
忘れるだろう
近づく春の
優しい足音とともに
僕の存在は次第に
希薄になっていく
君はもう僕の顔を
本当は見ていない
私はあなたのことを
愛していたの?
この心の欠けた感じは
私には決して
満たされることは
ないもののように思える
君は僕を忘れていく
少しずつ
そして完全に
忘れたことさえも忘れて
でも僕は
再びやって来るだろう
長い情熱的な
君の夏が終わり
色づいた木々の葉を
散らす
最初の冷たい風となって
君の心に
嫌悪と深く秘められた
愛を
また見つけ出すために

**


三月には
淡い悲しみが似合う
終わった冬を
誰も弔わない
わたしは弔う
わたしはあなたを憎んで
愛していたから
あなたが死んだいま
わたしは…
わたしはどうすればいいの
この明るい光の中で
世界の再生を告げる光の中で
あなただけがいない

**


こうして
あなたはわたしに
わたしはあなたに
たどり着き
この見棄てられた
時間と場所で
ふたりは
たがいの瞳に
互いを映し
手と手をからめ
唇に唇をかさね
二人だけのものになって
遠くからきて
遠くまでいくように
愛しあい
死んだように眠り
スコールの
遠い雷鳴がきこえる
世界のない
二人だけの時間に
迷いこんで
帰れない
出口の見つからない
ラビリンスの
永遠の愛の休日に
ふたりは溺れる

**


届くはずのない言葉
空しく立ち止まり
語られず
あなたの耳の
愛の言葉に
かぎりなく
やさしくささやかれて
消えていくの
どこへ?
悲しみの挨拶は
あなたが
見ることのない
微笑みの
向こうに
あなたの唇の
求めることのない
甘い接吻で
生まれては
死に
あいまいに
宙に
ゆれる
あなたの手の
触れることのない
この言葉たちの
乳房のように
わたしの胸で
空しく
待ち続け
どこにも何にも
たどり着くことのない

うつろな愛をえがく

**


そして終る
音のしない雷鳴の
ゆっくりと
空を走る稲妻のように
わたしは遠ざかっていく
誰よりも近い
あなたのほうへ
もう一度
見つけて失うために
心の底へと
沈んでいくために
浮き上がる
涙が
生まれては
そこで
しずかな時間を
永遠に
繰り返す
その場所で
もう一度
失なうための
最後の優しいキスを
交わす

**


愛よりも
君よりも
悲しい世界を僕は
見たことがなかった…

ああ
青空
あの青空へ向かって
墜ちていきたい
どこまでも
きっと
生まれてくる
僕は
君に
会いに
それは
悲しみを知ること
だとしても
純白のイノセンス
失っても
君に会いたい
たとえ
一瞬で
君のことを
忘れてしまうとしても
君ほど
悲しい世界は
見たことがなかった
たとえ墜ちていく
としても
忘れてしまうとしても
君を
生きなおすために
君を生きるために
もう一度
何度でも

**


そして
君もまた
どこかで
僕のいない
時間を
僕の知らない誰かと
生きて
こうして
老いてきてるのだろうか
僕のいない
時間を
君は生きて
僕の知らない
しあわせ
悲しみ
君の人生の時間を
生きてきたのだろうか
その長い時のあいだ
どこかで
まだ
そのままで
どこに行きようもなく
途方にくれて
時の
片隅で
忘れられて
あの時の
僕たちは
見つめあったままの
微笑みに
永久に
とり残されたままでいる

**


忘れたくない
忘れたいこと
思い出したくない
思い出すこと
もう遠いことだと
いつも言い聞かせてた
顕微鏡で見ないと
分からない遠い昔のこと
(望遠鏡?)
なにげない景色
夕方の人混み
ホ-ムに入ってくる電車
わたしを待ち伏せして
不意打ちする水曜日
なんでこうなんだろう
もう忘れたい
遠い昔のこと
涙の記憶
どこで漂っているの?
望遠鏡の中で
あなたが小さく
微笑んでる
流れていく街
流れていく人
思い出せない
もう思い出せない記憶
でも
でも
わたしを不意打ちする
涙の記憶

**

愛してるって
言葉は聞きあきた
それは水曜日のように
あたしの耳に
ささやきかける
愛してるって何?
それは見知らぬ顔
のようにやって来て
わたしの頬に
キスをして
やさしい傷を残した
これが愛なの?
答えのない答
透明な涙がこぼれる

**


この世界のずっと向こうにいや今ここに君の目の前に君が見ようとしない君が日々埋め殺してる愛があるんだ…愛の過剰の中で忘れられて死んでいく愛があるんだ

誰もが愛を求めてる
誰もが愛を見捨ててる
求められた愛
死んでいく愛
求められた愛が
愛を殺していく
愛が愛を殺していく
君には愛が愛を求めてる
叫びが聞こえないの?

この愛は
無視してもいいの?
この愛は
無視されてもいいの?
この愛は
見捨ててもいいの?
この愛は
見捨てられてもいいの?

君の求めてる愛って何?
何?

愛が愛を求めてる
瓦礫の下で
まだ息をしている
愛を救う人はどこにも
いないのか?
君は救おうとしないの?
君の求めてる愛って何?

愛が愛を殺してる
君が僕を殺してる
僕が君を殺してる

**

**

空の下を私は歩く
もうそんなことはないと思っていた
そんなことはずっとないと
なのに
なんだろう この感覚
うまく言えない
ここにいるということ
なんだろう うまく言えない
私はここにいなかったから
何処にも
今 ここに いる
青い空の下を歩いている
隣には そうあなたがいる
あなたが私の手を握る
ああ 私はもうここにいる
もうどこにも帰れない
ここにしか
あなたの側にしか
私のことをじっと見つめる
あなたにどうすればいいのだろう
わたしは
わたしは…

**


ちはるに


空を見上げるとき
人は何を見るのだろう

空にあるのは
私の心?
移り気な…

だから私はこんなに
空に惹かれるの?

そこにある未知のもの
言葉をすり抜けていく
謎めいて
美しく
不安な
孤独な

とらえどころのない
おまえ
おまえは
私自身なの?
鏡では決して見えない
私自身…
私の裸の心がそこにあるのかもしれない
それに気づかないで
でもだから懐かしく
空を見る
私の知らない私がそこ
にいる
そこにいるのに
そこにいるから
空を見る
空を見る時
私は私に帰っている

私の心の奥を
覗くように
私は青空に
吸い込まれていく
落ちていく
どこまで落ちても
たどり着かない
私を見いだす
空よ
美しい空よ
悲しい空よ

私の知らない私?
どうして私は
こんなに惹かれる
のだろう
空よ
おまえは
私自身
私の知らない
私自身

私の心
美しい
謎めいた
孤独な
私の心?

それとも
空よ
おまえは
私から
いつも
永久に
逃れていく何か
私が捉えたと思う瞬間
見失う何か
つまるところ
私自身?

空よ
私はおまえに飽きる
ことがない

**


明けていく
空をわたしは見ていた…

どこかで
もう一つの命が
ずっと昔
あなたと二人
こうして空を見ていた
気がする
わたしたちの
星をめぐる
大きな月
白い月が
ぽっかり青い空に
浮かんでいて
その月に
いるはずの
わたしの
失くした
大切な人を思って
わたしは泣いた
あなたは
その涙を拭いてくれた
ずっと遠い昔のこと…
あなたはどこに行ったのだろう
わたしはどこにいるのだろう
手を伸ばせば
つかめそうな
大きな月
空に
浮かんでいるのが
不思議なくらいの
大きな月
涙がにじむのは
あなたがそこにいる
からかもしれない
わたしは
ずっとこうして
空を見ていた
一人きりで
遠い過去の今も
遠い未来の今も
こうして見ていた
わたしたちの
星をめぐる
大きな月
空に
不思議に
浮かぶ球体を

遠い昔
遠い未来
忘れた顔に
何度も
出会い
何度も
忘れて
忘却のふちに
沈み
忘却のふちから
よみがえる…

**


私がもういなくなった
世界の
その青い空を思ってみる…

その時
私は
どこにいるのだろう

空に
空の青に
まだかすかに冷たい
三月の
空の青に
なっていたい

君は
その青い空を
何か
懐かしいもののように
思って見上げるだろうか
なにか失くしたもの
透明な光の中で
私はいない

空の青を

**


Sky is so blue
Sky is so blue and so high
and so sad like me
わたしは蒼くもなく
高くもなく
わたしは 何をする
この世界で
わたしは笑う
わたしは泣く
いつまで
そう わたしはいつまで生きる
ただ笑って
ただ泣いて
わたしはいつまで生きる
世界を憎んでいた わたし
世界を愛していた わたし
今 わたしは世界を憐れんでいる
もう世界を憎んではいない
愛してはいない
世界は世界
Let it live let it die
わたしは蒼くもなく
高くもなく
わたしは何をしている この世界で
笑って
泣いて
いつまで
そう いつまで

**

平成最後の日に


こんな空模様の日は
君に会いたい
君はいつものように
暗い眼をして
君の眼は何も見ていないようす
ほら空があんなに低いよ
水に濡れたような空
天使なんかいやしない
でもいいんだ
君はここで一人
誰もいやしない
世界は穏やかで
君は幸せだ

**


高く澄んだ秋の空を見上げる
あなたの瞳の
視線のその先に
何があるのか
私はずっと知りたかった

**

七瀬に



そう

夢を見ていたの

生きていると思った
愛してると思った
死んでいると思った

ただ夢を見ていただけ

あなたを愛してる
と思った
息もできないぐらい
苦しくて
暗い闇を
切なくて
あなたに会いたくて
走った

暗い闇に
足を踏み外して
墜ちていった
ゆっくりと
墜ちていった

あの日わたしは
あの場所で死んだと
思った
もうあなたに
会えないと思って泣いた
涙が虚しく
明けていく空に
墜ちていった

雨が降っていた
夏の雨が降っていた
冬の雨が降っていた
激しい雨が
優しい雨
涙が雨になって
雨が涙になって
やさしく
激しく
流れていた

流れていく時を見ていると
思っていた
未来が何処かに辿り着くと
思っていた
流れ星が流れて
宇宙の何処かにきっと
辿り着くように

雨が降っていた
記憶の中で
何処か遠いところで
何処か遠いところに
あなたは行ってしまう
行かないで
わたしの声は
わたしの声は
もう届かない
あなたの後ろ姿を見ている
あなたには後ろ姿しかない
わたしの声は
わたしにしか届かない


雨の中で
わたしは一人
あなたの優しい腕に抱かれて
そう
ただ夢を見ていただけ

遠くで
雨が降っていた
雨に滲んでいく…
あなたは何処に行ったの?
わたしは何処にいるの?
あなたは生きているの?
わたしは死んでいるの?
愛していたの?

雨の音

雨の音

雨が聴こえていた

雨が聴こえている

聴こえているのは

雨 雨 夢降れ


わたしは…

そう

ただ夢を見ていただけ


**


三月の雨 わたしは好きだ
部屋で あなたと 二人 はなしをする
話すことがなくなれば
ただ雨の音を聴いていればいい

そう ただ
雨の音を聴いていればいい
そして 互いに 寄り添っていればいい
そのまま ずっと ずっと


世界が終わったことも知らないで


**

雨の日
幽霊が出るって
本当だ
雨の日
傘をかざして
人はみな幽霊になる

雨の日
わたしは幽霊になる
わたしはここにいなくなる
雨音
雨の降る音
を聴きながら
わたしは
わたしの
外に出ていく
わたしはここにいない
傘の下にいない
わたしは雨粒になって
暗い街に降り注ぐ

雨の日
わたしは
わたしの
失くした人たちに
再び出会う

静かに降る
夜の雨を聴いていると
あなたが
わたしの側に
まだいる気がしてくる
あなたも
雨を聴くのが
好きだった

雨があなたを
連れてきてくれる…

雨の音を
聴きながら
わたしは
どこに行くのだろう
どこにいるのだろう
わたしは
遠い空のどこにいるのだろう
暗い街のどこに
降っていくのだろう
わたしは
また自分のもとに
帰って来れるのだろうか
もとの自分に
戻って来れるのだろうか

雨…


**



やさしい雨
わたしは 思う
このやさしい雨が
止んだ時
いなくなっていればと
晴れた空
わたしはもういない

**

奈々未に


ほら

空から
雪が降りはじめた

遠い空から
ゆっくりと
落ちてくる

その

長いようで
短い
儚い
時間のことを
僕は思っていた…

さようなら

君がそう言って
背を向けて
歩き出す

君の後ろ姿が
ゆっくりと
小さくなる

小さな
君の背中

降りしきる
雪に
紛れて
もう見えない

僕は目を閉じる


君を
冬を
美しい君の

瞳を

冬の
幻の
この冷たさ
この美しさ

君の

美しさを
いつまでも
僕の心に

留めておくために

ただ目を

**


気がついたら

僕には
高い空から
落ちてくる
雪のひとひら
見えていた

高い

高い空から
それは落ちてくる
ゆっくりと
とても
ゆっくりと

停止してるみたいに

いつからだろう
そんな
雪のひとひら
君に思えたのは…

雪は

長い時間を
通って
乾いた地面に
たどり着き
そこで
静かに
そっと
消えてしまう
まるで
初めから
存在していなかった
みたいに

君も

そんなふうに
そっと
消えてしまう
いつからか
そっと消えてしまう
そんな気が
していた

君と

いつ出会ったのか
不思議なことに
僕は思い出せない
君は
この世のものじゃない
気がしてた
気がしてた
それは君が
青い空から
落ちてくる雪だから

一人孤独に

青い空の冷たい底で
生まれて
他の雪と
群れをなすこともなく
群れをなさないが故に
温かく
乾いた地面に
触れて
消えてしまう
そんな雪
孤独な雪
あり得ない世界の
存在しない雪の
この世のものじゃない
世界の雪

君は

そんな
不可能な
雪として
底冷えのする
青空で生まれた
あり得ないが故に
こんなに冷たくて
こんなに美しくて
こんなにはかない

雪 君

落ちてくる
長くて短い
儚い時間

僕には
永遠に思える
思えた
長い時間

そんな時間が
かつてあったこと
そのことを
僕は今
真夏の
雲一つない青空を
見上げて
思い出している

もし今

あの青空の底に
あり得ない
impossibleな
雪のひとひら
落ちてくるのが
見えたなら…

**


雪のひとひら
遠い高い
空で
生まれて
ゆっくりと
地上に
落ちてくる
その長い時間を
あなたは
想像したことがある?
重さがないような
雪の小片になって
ゆらゆら
虚空を
落ちていく
感覚
無限のようにも感じる
その長い時間
わたしの人生も
そんなふうに
長い時間を
空から
落ちてきたのかしら
そして
無限を落ちてきた
雪が
最後に
地面で
そっと
消え去るように
わたしも
消えて
地面で
そっと消えて


**