気がついたら 僕には


気がついたら

僕には
高い空から
落ちてくる
雪のひとひら
見えていた

高い

高い空から
それは落ちてくる
ゆっくりと
とても
ゆっくりと

停止してるみたいに

いつからだろう
そんな
雪のひとひら
君に思えたのは…

雪は

長い時間を
通って
乾いた地面に
たどり着き
そこで
静かに
そっと
消えてしまう
まるで
初めから
存在していなかった
みたいに

君も

そんなふうに
そっと
消えてしまう
いつからか
そっと消えてしまう
そんな気が
していた

君と

いつ出会ったのか
不思議なことに
僕は思い出せない
君は
この世のものじゃない
気がしてた
気がしてた
それは君が
青い空から
落ちてくる雪だから

一人孤独に

青い空の冷たい底で
生まれて
他の雪と
群れをなすこともなく
群れをなさないが故に
温かく
乾いた地面に
触れて
消えてしまう
そんな雪
孤独な雪
あり得ない世界の
存在しない雪の
この世のものじゃない
世界の雪

君は

そんな
不可能な
雪として
底冷えのする
青空で生まれた
あり得ないが故に
こんなに冷たくて
こんなに美しくて
こんなにはかない

雪 君

落ちてくる
長くて短い
儚い時間

僕には
永遠に思える
思えた
長い時間

そんな時間が
かつてあったこと
そのことを
僕は今
真夏の
雲一つない青空を
見上げて
思い出している

もし今

あの青空の底に
あり得ない
impossibleな
雪のひとひら
落ちてくるのが
見えたなら…
.