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空の下を私は歩く
もうそんなことはないと思っていた
そんなことはずっとないと
なのに
なんだろう この感覚
うまく言えない
ここにいるということ
なんだろう うまく言えない
私はここにいなかったから
何処にも
今 ここに いる
青い空の下を歩いている
隣には そうあなたがいる
あなたが私の手を握る
ああ 私はもうここにいる
もうどこにも帰れない
ここにしか
あなたの側にしか
私のことをじっと見つめる
あなたにどうすればいいのだろう
わたしは
わたしは…

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ちはるに


空を見上げるとき
人は何を見るのだろう

空にあるのは
私の心?
移り気な…

だから私はこんなに
空に惹かれるの?

そこにある未知のもの
言葉をすり抜けていく
謎めいて
美しく
不安な
孤独な

とらえどころのない
おまえ
おまえは
私自身なの?
鏡では決して見えない
私自身…
私の裸の心がそこにあるのかもしれない
それに気づかないで
でもだから懐かしく
空を見る
私の知らない私がそこ
にいる
そこにいるのに
そこにいるから
空を見る
空を見る時
私は私に帰っている

私の心の奥を
覗くように
私は青空に
吸い込まれていく
落ちていく
どこまで落ちても
たどり着かない
私を見いだす
空よ
美しい空よ
悲しい空よ

私の知らない私?
どうして私は
こんなに惹かれる
のだろう
空よ
おまえは
私自身
私の知らない
私自身

私の心
美しい
謎めいた
孤独な
私の心?

それとも
空よ
おまえは
私から
いつも
永久に
逃れていく何か
私が捉えたと思う瞬間
見失う何か
つまるところ
私自身?

空よ
私はおまえに飽きる
ことがない

**


明けていく
空をわたしは見ていた…

どこかで
もう一つの命が
ずっと昔
あなたと二人
こうして空を見ていた
気がする
わたしたちの
星をめぐる
大きな月
白い月が
ぽっかり青い空に
浮かんでいて
その月に
いるはずの
わたしの
失くした
大切な人を思って
わたしは泣いた
あなたは
その涙を拭いてくれた
ずっと遠い昔のこと…
あなたはどこに行ったのだろう
わたしはどこにいるのだろう
手を伸ばせば
つかめそうな
大きな月
空に
浮かんでいるのが
不思議なくらいの
大きな月
涙がにじむのは
あなたがそこにいる
からかもしれない
わたしは
ずっとこうして
空を見ていた
一人きりで
遠い過去の今も
遠い未来の今も
こうして見ていた
わたしたちの
星をめぐる
大きな月
空に
不思議に
浮かぶ球体を

遠い昔
遠い未来
忘れた顔に
何度も
出会い
何度も
忘れて
忘却のふちに
沈み
忘却のふちから
よみがえる…

**


私がもういなくなった
世界の
その青い空を思ってみる…

その時
私は
どこにいるのだろう

空に
空の青に
まだかすかに冷たい
三月の
空の青に
なっていたい

君は
その青い空を
何か
懐かしいもののように
思って見上げるだろうか
なにか失くしたもの
透明な光の中で
私はいない

空の青を

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Sky is so blue
Sky is so blue and so high
and so sad like me
わたしは蒼くもなく
高くもなく
わたしは 何をする
この世界で
わたしは笑う
わたしは泣く
いつまで
そう わたしはいつまで生きる
ただ笑って
ただ泣いて
わたしはいつまで生きる
世界を憎んでいた わたし
世界を愛していた わたし
今 わたしは世界を憐れんでいる
もう世界を憎んではいない
愛してはいない
世界は世界
Let it live let it die
わたしは蒼くもなく
高くもなく
わたしは何をしている この世界で
笑って
泣いて
いつまで
そう いつまで

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平成最後の日に


こんな空模様の日は
君に会いたい
君はいつものように
暗い眼をして
君の眼は何も見ていないようす
ほら空があんなに低いよ
水に濡れたような空
天使なんかいやしない
でもいいんだ
君はここで一人
誰もいやしない
世界は穏やかで
君は幸せだ

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高く澄んだ秋の空を見上げる
あなたの瞳の
視線のその先に
何があるのか
私はずっと知りたかった

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