遠い夏の日の図書館を思い出す

遠い夏の日の図書館を
思い出す
蒸し暑い室内で
勉強した後
涼しくなった夕方
図書館の周りの林を
あなたと二人で散策した
私にはあの夏の日がまだ
何処かに存在しているような
気がするのだ
あなたと過ごした
あの夏の午後や夕方が
もう存在していない
消えてしまったなどと
いうことがあるのだろうか?

いつまでも続くと思えた夏の夕方に
木々の間をゆっくりと薄青い空の下を
あなたと静かに語らいながら歩いた
いつまでも終わらない夏の夕方が
きっと何処かにあるはずだと
そう私には思える
そして私はそこであなたが
微笑みながら
私に囁いているのを聞いている

たぶん間違ってしまったのは
あの夏の日ではなく
今ここにいる私の方なのかもしれない
私がここに来てしまっただけで
あの日はまだそこにある
あの日とあの日の私たちも
そして私はどうやって
今ここに来てしまったのか
分からないままあの日に帰ることが
できないのだ

あの木々の間を散歩しながら
あなたの微笑むのを見ていた
私に微かに射した影
本当の私は
永遠に終わらない夏の夕方を
あなたと二人でいまでも
歩いているのだろう
遠く離れてしまった影のような私を一人
今ここに残して