空を見上げるとき

空を見上げるとき
人は何を見るのだろう

空にあるのは
私の心?
移り気な…

だから私はこんなに
空に惹かれるの?

そこにある未知のもの
言葉をすり抜けていく
謎めいて
美しく
不安な
孤独な

とらえどころのない
おまえ
おまえは
私自身なの?
鏡では決して見えない
私自身…
私の裸の心がそこにあるのかもしれない
それに気づかないで
でもだから懐かしく
空を見る
私の知らない私がそこ
にいる
そこにいるのに
そこにいるから
空を見る
空を見る時
私は私に帰っている

私の心の奥を
覗くように
私は青空に
吸い込まれていく
落ちていく
どこまで落ちても
たどり着かない
私を見いだす
空よ
美しい空よ
悲しい空よ

私の知らない私?
どうして私は
こんなに惹かれる
のだろう
空よ
おまえは
私自身
私の知らない
私自身

私の心
美しい
謎めいた
孤独な
私の心?

それとも
空よ
おまえは
私から
いつも
永久に
逃れていく何か
私が捉えたと思う瞬間
見失う何か
つまるところ
私自身?

空よ
私はおまえに飽きる
ことがない
.

奈々未に

ほら

空から
雪が降りはじめた

遠い空から
ゆっくりと
落ちてくる

その

長いようで
短い
儚い
時間のことを
僕は思っていた…

さようなら

君がそう言って
背を向けて
歩き出す

君の後ろ姿が
ゆっくりと
小さくなる

小さな
君の背中

降りしきる
雪に
紛れて
もう見えない

僕は目を閉じる






君を
冬を
美しい君の

瞳を

冬の
幻の
この冷たさ
この美しさ

君の

美しさを
いつまでも
僕の心に

留めておくために


ただ目を…

そうして わたしは歩き出す


そうして
わたしは歩き出す
明日に向かってではない
わたしに明日はない
なにか知らないものに
向かって
わたしはどこを見ればいいのかも
わからない
わたしの眼は役目を失なって
いるだろう
見えていても何も見えてはいない
わたしの
不確かな足取り
それでも
わたしは歩き出す
何故だかは分からない
それはわたしが
何故だか分からないが
この世に生まれてきたような
ものだろう
わたしの先に何が待っているのか
何も待っていないのか
いや 誰かに待っていてほしい
わたしの知っている人
いや
わたしの知らない人
わたしの失くしたもの
わたしが初めから持っていなかったもの
わたしが存在することすら
知らなかったものを
わたしは見い出すのだろうか
真っ暗な闇がわたしを
待っている
いや輝く光
わたしは眩しくて何も
見えないのだろう
わたしは歩いていると思っている
だけなのかもしれない
わたしはどこにも向かっては
いないのだ
たぶんそういう観念はもう
役に立たないということなのだろう
わたしは何も見ないし
何も聴かないし
何にも触れることはない
そのようにして
何かを見て
何かを聴いて
何かに触れるのだろう
古めかしい神学の教えを
わたしは思いだすのだろう
それでも
わたしはあなたを見たいのだ
あなたを
あなたの声がわたしに
語るのを聴きたいのだ
あなたの手がわたしの頬に
触れるのを感じたいのだ
あなたの姿をわたしは
知らない
あなたの声をわたしは知らない
あなたの手の温もりを
わたしは知らない
わたしはそれら全てを思い出す
思い出すという言葉の意味が
なくなってしまうように
思い出す
そしてわたしはあなたに
抱擁されている自分を
見出すのだろう
一度も会ったことのなかった
あなたの腕の中で長い夢から
覚めることになるのだろう
わたしはそう思いたい…

君の声をもう一度聞きたかった

君の声を
もう一度
聞きたかった
君の声は
何処に行ったのか
僕は
君の声を
もう一度
聴くために
この長い年月
生きてきたのだ
世界の果てで
木霊している
君の声を

そして

消えてしまった
君の声が
秘かに
近づいて来るのを
感じるのだ
その声は
そこにある
そこに
僕は
ずっと
それを
聴いていたのだ
君の声は
ずっと
僕を呼ぶのを止めて
いなかった
あぁ
どうして
今まで
その事に
気がつかなかったのだろう
どうして
声が
消えてしまったなんて
ずっとそこにあるものが
聴こえないなんてことが
可能だったのだろう
おそらく
僕は勘違いをしていた
僕が存在してると思ってたもの
僕は存在していなかった
遠いところから
僕を呼ぶ声
今 気づいたんだ
僕は存在していなかったんだ
君の声が
こうして
僕を存在へと呼び戻してくれた
君が消えてしまったんじゃない
僕が存在していなかったんだ








僕は
ここにいる
君の声は聞こえない
消えてしまった

もう一度
君の声を聞きに
そこに
世界の果てに
僕は行けるのだろうか
どうすれば
そこに
行けるのだろうか
世界の果てに
君の声が
木霊するそこに

たとえあなたが死んだとしても

たとえあなたが死んだとしても
だって私だっていなくなる
そういなくなるんだから
だから明日には
もっとずっと先には…

そうしたら
私たちどこに行くのかしら
ここにいることって何?
ここにいないことって?
ここからいなくなるために
私たちは生きているの
私たちは生きているの?

ここにいることって?
ここにいないことって?

空の下を私は歩く

空の下を私は歩く
もうそんなことはないと思っていた
そんなことはずっとないと
なのに
なんだろう この感覚
うまく言えない
ここにいるということ
なんだろう うまく言えない
私はここにいなかったから
何処にも
今 ここに いる
青い空の下を歩いている
隣には そうあなたがいる
あなたが私の手を握る
ああ 私はもうここにいる
もうどこにも帰れない
ここにしか
あなたの側にしか
私のことをじっと見つめる
あなたにどうすればいいのだろう
わたしは
わたしは…

Die Verwandlung

Die Verwandlung

そしてわたしは
この世界から
出ていく
翔び立つ日が
来ることを
その陰鬱な日々の間
心のどこかで
予感していた
その日が来ることを
その歓喜の日が来ることを
その絶望の日が来ることを


変わりゆく
わたしの身体は
その日のため
忌まわしく
美しく
変身してゆく
わたしの
身体は
その日のため
わたしは
それを知らなかった
そのことが
わたしを
どれだけ苦しめただろう
あの苦悩の日々
わたしは
おぞましくも
美しい
わたしの蛹の中で
泣いた
きらきら光る涙を通して見た
この世界は
どれだけ
美しく
醜く
見えただろう
あの苦悩の日々
哀しみの日々
それはこの日のため

美しく
変身した
わたしは
この世界から
出ていく

翔び立つ日